騙らぬコトノハ

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自分達は一人の少女の窮地を救うのだと理解する級友達の言葉も、見方を変えれば間違っていないのだろうけど。 きっと誰もが秘密の共有を守り通すとも分かるけれど、その実、見えない所では揶揄と嘲笑の対象にされ続けてしまうのではないか。 皆が一つの嘘を共有し沈黙を守っていても。 告げては不味い言葉を大人達からは隠して、自分が当事者で無かった幸運を秘かに喜んで。 優しく誰かを助けながら、その同じ誰かをどうしようもなく傷付けている。 言葉でハッキリ否定を告げた二宮は何時しか俯き、蒼白な顔で拳を握り締めていた。 結果としては誰が妊娠したのか暴こうとしない点において同じだったけど、握られる拳と共に身に(まと)われる雰囲気は鋭利な刃に変わっていて、強い怒りを内包している様子が伝わって来る。でも誰もが気付いた素振りを見せない。自分達の正義感を正当化する嘘の為に。 深く事情を知ろうとすれば、悪意をまぶした親切の中に居られなくなるから。 知らない誰かの外れ掛けた人生のレールを、皆で敷き直した程度にしか考えていない。 溜め息を吐く奴が居た。 引っ越しで、遠い中学から来た生徒。 無意識に見詰めた視線の一つが、その溜息を吐いた生徒の視線と絡む。
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