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来栖は自分も大概下卑た性質だと思う気持ちを隠し渡辺と肩を並べた。
「二宮さ」
意外な事に教室を出て直ぐに渡辺は語り始めた。
話題が話題なだけに来栖は声を潜めて尋ねる
「不味いんじゃないの」
「誰も気にしねえさ。今は別の話題がセンセーショナルだ」
「そうだね」
生徒の妊娠など学校側に知られたら放っては置かれないだろう。だからこそ生徒間だけで何とかしようとのネットワークが働いている。
目交ぜ。思わせ振りな素振り。遠回りにして分かり易い言葉。それ等を駆使して、今は一人を救う秘密にして最大級のミッションが行われている。
関係性の薄い生徒程、ゲームへの参加程度にしか考えていないのじゃないだろうか。
何故なら、事実は知らされないのだから。
言葉の断片から推測出来ても、それを鋭く指摘するのは憚られるから。
「彼女、二宮さん凄いね」
タブー化した問いを指摘した彼女は愚かなのだろうか。
「凄くねえよ。ありゃ、傷だ」
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