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忙しそうに働く人たちの気配を感じながらうつらうつらとしていた頃、ふいに名前を呼ばれて薄目を開けた。 「力弥(りきや)君」 見覚えのない中年の男性が、労わるような目線を向けながらぼくの前髪をなで上げている。 何とか焦点を合わせて顔を見つめ返すが、やはり誰だか思い出せない。 後ろにしっかりとなでつけられた、軽くウェーブのかかった髪。 意思の強そうな、くっきりとした眉と切れ長の目。 すっきりと通った鼻筋。 真一文字に結ばれた、薄い唇。 ただ横に座っているだけなのに漂う威圧感…でもまなざしはあたたかくて… 誰かに、似てるんだけどな…
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