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「ああ、すまない。俺は高瀬治樹(たかせはるき)の父親だ。」 そう言ってジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出すと、自分の名刺をぼくの枕元に置いた。 そうか、治樹のお父さんか。きりっとした眉毛と目元の雰囲気が、確かによく似ている。 「大丈夫だったかい?いや、大丈夫じゃなかったね…一人で、あんな寒い部屋で…」 薄い布団がかかった僕の胸元に片手を置き、もう一方の手で額の生え際を何度もやさしくなでてくれる。その手のひらのあたたかさ、心地よさに、僕はゆるゆると息を吐く。 そこに昨夜とは別の医者がやってきた。 「高瀬さんですね。ちょうどよかった。立川くんは低栄養状態と体温の低下で意識を失ったというところでして、今のところ、それ以外の重篤な不調は見当たりません。後ほど詳しく検査しますが、幸い、肺炎などの症状も見られないので、しばらく点滴などで栄養補給を行います。まぁ、一週間ほどで退院できるでしょう。」
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