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治樹のお父さん、芳樹(よしき)さんが言うには、僕が自宅の茶の間で倒れていたのを、治樹が発見したのだという。その日はすべり止めの私大の入試があった日で、同じ教室で受験すると思っていた僕が見当たらず、一つだけぽかりと空いて席を見ていやな予感がしたらしい。受験が終わって急いで僕の家に立ち寄ったところ、茶の間で倒れていた僕を見つけ、救急車を呼んでくれた。
目を覚ました翌日、別の大学の入試を終えた治樹が、隆平(りゅうへい)、巧(たくみ)を連れてお見舞いに来てくれた。僕たち4人は、高校でいつもつるんでいた。ばあちゃんを亡くし、独りになってしまった僕にとって、かけがえのない、大事な仲間だ。
「お前、おばあさんの骨壺抱えるようにして倒れててっ…。きっとお前もおばあさんに連れていかれたに違いないって…っ」
治樹の涙腺は完全に決壊している。
周りを気遣い、声をかみ殺しながら嗚咽を漏らす治樹の姿に、僕まで涙ぐんだ。こんなに思ってくれる友達がいる。僕は独りぼっちになったけど、孤独じゃないんだ。
「治樹、ありがと…」
まだふらつく体を起こして、突っ伏した治樹の肩をそっとなでていると、一粒だけ、涙がこぼれた。
そんな僕らの背中を、隆平と巧がやさしくさすってくれている。
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