IF…二人のハロウィーン

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イベントは大盛況で、僕はたくさんの子供たちにお菓子を配った。芳樹さんは「お菓子をくれなきゃ、血をもらうぞー!」とか言いながら、大騒ぎする子供たちを追いかけて遊んでいる。予想通り、子供と一緒に歩くお母さんたちも多くって、リクエストに応じて芳樹さんと親子連れの写真を撮ってあげたりもした。かわいい仮装をした子供たちと、それを見守る保護者の皆さん。そしてお菓子を配る社員さんたち。イベントに参加したみんながいい笑顔を見せている。僕も、ずっと笑っていた。子供たちに喜んでもらいたい、って思いながらお菓子を配っているうちに、自分が“かっこいい”狼男かどうかなんて気にならなくなってしまったから。 「そういえば力弥はどうして『かっこいい』狼男にこだわったんだ?」 家に向かう車内で芳樹さんがたずねた。 本当のことを教えたら、あきれられてしまうに違いない。でも「教えてくれなきゃ、いたずらするぞ?」って言われたらごまかすわけにもいかなくて…。 「えっと、お子さんの仮装イベントだって聞いたので、きっと若いお母さん方もたくさん来るんだろうな、と思ったんです…でも、ドラキュラ姿の芳樹さんなんて絶対かっこいいに決まってるから、きっとたくさんのお母さんから迫られるに違いないって…だから僕、かっこいい狼男になって『この人は僕のものだ』って、言いたくてっ…!」 ハンドルを握る芳樹さんが、深いため息をつく。僕はいつの間に、芳樹さんにこんなに執着するようになってしまったんだろう。一人前に彼氏面してしまう自分が情けなくて、涙がせり上がった。 「ああ力弥、勘違いしないでくれ…俺は今、喜びに打ち震えてるんだ。ヤキモチを焼かれて、これほど嬉しいと思ったことはないよ。」 「えっ?」 赤信号で停止した車の中、芳樹さんが僕の頬にチュッとキスをする。再び、音もなく動き出す車。 「そうやって俺に対する愛情を目いっぱい表現してくれるお前が、俺は愛しくてたまらない。」 前を向いたまま、すっと目を細める芳樹さん。口元には優しい笑みが浮かんでいる。 「こんなに頑張り屋さんで、一途で美人な子が、俺の隣でママさん連中を威嚇しようと思ってるなんてさ、男冥利に尽きるよ。……家に帰ったら、いっぱい愛し合おうな?」 ギアに添えられていた手がそっと僕の太ももをなでる。僕は恥ずかしさに顔を両手で覆ったまま、コクコクとうなづいた。
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