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ということは人間の女の子。だとすればこんな化け物ばかりの場所にいるのは危険すぎるのではないか。葉子の防衛本能が赤ランプを点灯させる。
「今すぐにここから逃げましょう。人間がいるには危なすぎます」
「おいこら待て。小紅は人間じゃなくて鬼だ」
「ええ! でもほら首飾りしていませんし」
「それはただこいつが人間っぽい見た目なだけだ」
そう言って阪口は雑に少女の頭を触る。ああ、さらさらな髪が乱れていく。
「ほら」
ぼさぼさになってしまった小紅の髪の一ヵ所を、阪口は指差す。指の示す先にあったのはちょこんと生えた突起物。
「鬼のツノだ」
「そ、そんな」
鬼といえば昔話『桃太郎』にでてくる化け物だ。人々から金品財宝を根こそぎ奪い取り、逆らうものは棘つき金棒で嬲り殺し、大鍋で煮て食べる。そんな暴力的なイメージ。
「ち、違います。この子は『桃太郎』の鬼ではなく、『泣いた青鬼』にでてくる赤鬼のように心優しい鬼に違いありません。きっと」
「鬼に優しいやつなんかいるか」
淡い思いをバッサリと切り捨ててくるスタンスの阪口。血も涙もないのかこの男には。
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