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時は昨日まで遡る。春うらら。四月のことだ。
この春から埼玉県の大学に進学した緒乃葉子は、色鮮やかで華やかなキャンパスライフを夢見て――などはいなかった。
大学生のイメージといえばと聞かれたら、どう答えるだろうか。サークル、飲み会、合コン、アルバイト。人生の夏休み、などと答える人がいるだろう。
だがそんな甘い誘惑に惑わされてはいけない。飲み会や合コンといったイベントは、一部の許された『持っている』人種が行なうものであり、『喪っている』人種が触れることも許されない禁厄。
すなわちタブー。または暗黙の了解なのである。
大学に入学して早一週間。新入生たちも徐々に大学という劇薬に馴染みはじめていた。口を開けば飲み会、二時間しか寝てない、もう単位落としそう、今度合コンしようぜ、と充実アピール合戦を繰り広げている。
大学生活一週間で既にカースト制度は出来上がっていた。
「ふぅ」
葉子は現在流行りのぼっちである。大学カースト制度で言えば底辺だ。だがそれを感じさせない上品な佇まいと、気品溢れるオーラで何とか誤魔化しているハリボテガールだ。
「これから飲み会あるけど緒乃さんも来る?」
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