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「いつの時代も、どんなやつも。自分とは違う種族がくると敵と見なして一方的に攻撃をしてくる。自分を、自分たちを守るために。ただそれだけの話だ」
それを聞いて、ひどいと思った。
なんとなく悟ってしまう。化け物たちはこちらの世界で人間からひどい仕打ちを受けたのだと。危害を与えるつもりはなくても、自分たちとは違う種族だから、という理由で。
「ひどい話、ですね」
「どこにでもある話だ」
悲しい眼を、阪口はしていた。
葉子には謝ることも、同情することもできなかった。化け物の気持ちを考えてしまうとやるせない気持ちでいっぱいだった。あったことは、過去は変えられない。今の自分が言えることはなんだろう。仕方ないですよ、で済ませるのか。すみませんでした、と謝罪をするのか。違う、そうじゃない。葉子自身の言葉で、言えることはこれしかなかった。
「わ、わたしは――」
大きく息を吸い込み、一気に吐き出す。
「わたしはそんなひどいことしませんッ。人間だからとか、化け物だからでは、差別はしません。でもそういったことをする人間がいるかも知れませんが、しない人間もいます」
だから口にする。
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