第一話 ハロー、ハローワーク

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 確かアルバイトを探していて、拾ったチラシを見て、一〇〇〇万という怪しすぎる時給にまんまとつられ、話を聞きに行ったらそのまま面接に突入し、怪しすぎる職員たちと出会い、まずは試しに見学していて――現在に至る。  後悔していた。  むしろ後悔しかしていない。  身を以って体験した。  これが『後悔先に立たず』だった。 「おねえちゃんをいじめたらだめ!」  ただただ立ち尽くしている葉子の前に、なんと小紅が割って入った。思わず目を丸くしてしまう。どうして逃げていないのか。 「ああン?」  ミノタウロスは息を荒げたまま、あまりに小さい少女を見下ろす。 「ふーッ。ここはガキがくる場所じゃねえぞ」 「いじめたらだめ!」  少女は震えていた。  目頭に涙すら浮かべている。  大人の人外ですら一目散に逃げてしまうようなミノタウロスに、小さな少女は立ち向かっている。怖いに決まっている。怖くないわけがない。それでも勇気を振り絞って葉子を助けようとしているのだ。
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