第一話 ハロー、ハローワーク

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 求職者の逃げ出した建物内。  辺りに散らばる書類やら何やら。  そとへと通じるぶち抜かれた壁が二箇所。  へたりと腰を抜かしている葉子に、抱かかえられたままの小紅が言う。 「守ってくれてありがと、ヨーコおねえちゃん」  混沌としたこの場において、似つかわしくない笑顔。この笑顔を守れただけでも勇気を出した甲斐があったと思う。 「あー、えっと。ありがとうございました阪口さん」 「気にするな。ああいう輩の対応するのがおれの役目だ」  勘違いしていたのかも知れない。  大雑把で適当で、ただの雑用係だと思っていたこの人は。実際は化け物想いで腕っ節が強くて、ここの責任者だったなんて。 「それよりも、なんだ。こんなことあっちまったが……まだここでアルバイトしたいって思うか?」  こんな怖い思いをした。  一歩間違っていれば命を落としていた可能性もあった。 「そうですね。正直なところやっていける自信はありません」
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