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講義が終わると同時、明らかにチャラい外見と内面をした金髪ボーイが声をかけてきた。あまりに突然のことに彼女は内心動揺する。だがそれを悟られないよう動じずに返答する。
「あ、いえ、その、お構いなく」
小声と早口と目逸らし。この三点コンボを喰らった金髪ボーイは頭上に?マークを浮かべて首をかしげている。どうやら上手く聞き取れなかったようだ。これは恥ずかしい。
葉子は荷物をまとめて席を立つと金髪ボーイに会釈して逃げるように講堂を飛び出した。
緒乃葉子の人見知りは伊達じゃない。その辺のファッション人見知りとは違う。この世に生まれた瞬間、実の両親に人見知りをして泣くのを遠慮したほど彼女のは筋金入りだ。
だから何だと言うのか。内弁慶だっていいじゃないか。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息を切らせながらひと気のないところまでやってきた。人見知りにいきなり声をかけるとはひどいことするなぁ、とか内心文句を垂れつつ、どっと溜め息を吐いた。
時刻は一六時を過ぎており、もう講義はなく帰宅する流れなのだが、葉子は人混みが嫌いであった。だから混む時間を避ける必要がある。だからすぐには帰れない。
大学校舎から最寄りの駅までバスが出ている。乗車時間は大体一〇分ほど。駅まで徒歩で行けない距離でもないが、大抵の学生はバスを利用している。
「仕方ありませんね、歩いて帰りましょう」
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