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迫り来る化け物の波から彼女を守ってくれたのはこの職安の雑用係であり所長でもある男――阪口庵吾。次々に飛びかかってくる化け物たちをあちらこちらに吹き飛ばす。
「さ、阪口さん。一体これは何が……」
「説明は後だ。二階の職員部屋に行け」
なにがなんやらわからないが、とにかく言われた通りにする。壁となって守ってくれる阪口に背を向ける。背後から葉子の名を呼ぶ声が聞こえるが、聞こえないフリをして階段を駆け上がる。
二階は保険やらなんやらの手続きを行なう場所で、その奥に職員専用の部屋がある。二階にいる化け物たちに見つからないうちに部屋へと入る。
「ふぅ」
無事に逃げ切ったことに安堵の溜め息。
それにしてもあの化け物の変わりようは何だったのか。先日はじめてこの場にきて、アルバイトすることになり、短い時間だったが見学をした。そこではちゃめちゃな騒動に巻き込まれた。そのときは人間に対して敵意むき出しだった化け物が、この有り様である。
不穏な空気と妙な寒気をひしひしと感じる。
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