第二話 化け物たちが夢の跡

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 そんなことを急に言われても社会人経験おろかアルバイト経験だって皆無の自分に教えることなんてない。むしろ教えてほしいくらいだ。  日本には適材適所という言葉があり、これは人には向いている仕事や場所があるという意味で、人になにかを教えるのに必要なのは知識と熱意、それと話術。そのどれも葉子は持っていないし、一般常識すら欠けているところがある。 「おれたち化け物を人間社会で生きる道を導いてくれ」 「ま、まあ。そこまで頼み込まれたら仕方ないですね」  これまで他人から頼まれることといえばしょうもないことばかりだった葉子は、ほんの少し舞い上がっていた。頼りにされている、お願いされているというのは気分がいいものだと知ってしまった。こうして柄にもなく引き受けてしまった。 「そうか、やってくれるか。なら話は早い。早速準備してくるわ」 「え、あ、ちょ」  言うや否やダッシュで消えていく阪口。  やるとは言ったものの、今すぐとは聞いていない。  でも受けてしまった以上、期待を越えなくてはならない。 「うっ。プレッシャーによる吐き気が」
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