351人が本棚に入れています
本棚に追加
気分は一転、最悪に。
どうしよう。なにを話せばいいのか。本やネット、これまで生きてきた経験談から独断と偏見で語るしかない。適当にそれらしい口調で言えば、なんとかなる。はず。
こうなれば腹を括るしかない。正解なんてものはないんだと自分自身に言い聞かせて。
正解がないなら、正解にすればいい。
そして場所は変わって施設内の一室。
化け物たちでぎゅうぎゅうとなった部屋の前方にある教壇で、一身に視線を浴びているのは葉子と阪口。もはや満員電車並みの混み具合に蒸し暑さと息苦しさを覚える。
「あの阪口さん……多くありませんか?」
「ああ。おれもこんなに来るとは思わなかった」
さすがの阪口も戸惑い、続けて紡ぐ。
「せいぜい来るのは暇な小紅くらいかと。まあ来なかったが」
「ひどい」
見通しが甘すぎる。聞きにくるのがいなければいないで寂しいが、これだけの人数が集まると逆にやりづらい。
「さてと。そろそろ時間だ」
マイクを片手に、阪口は一歩前に出る。
最初のコメントを投稿しよう!