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「久々に疲れたわ。今日はもう仕事しねぇ」
「おれは何だかふっきれました。ぐたぐだ悩んでいたのが馬鹿らしいです」
「ふふ。それはなによりです」
夕暮れに沈む河川敷。
カラスが鳴いている。そろそろ帰る時間だ。
茜空を見上げていた黄熊がぽつりと呟く。
「……あのときのおれは、どうすれば正解だったんだろう」
怒りに身を任せてしまった後悔をしていた。それに対して阪口が何か言おうと口を開くが、言葉を遮ったのは驚くべきかな葉子だった。
「迷える黄熊さんにこの言葉を贈りましょう」
目を閉じ、立てた人差し指をくるくると回す。
「――正しい道を選ぶのではなく、選んだ道を正解にすればいいんです」
これで少しでも迷いが晴れれば、よいのだが。
「……そうですね。その通りかもしれません」
心配を他所に何か悟った黄熊。
もう大丈夫だ。
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