第三章 過ぎたるはなんとやら

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第三章 過ぎたるはなんとやら

 美咲は有頂天になった。そんな美咲にも解決できないことがあった。 『学校の成績もなんとかならないかな。』 『そうだ、先生の名前もラブノートに書いちゃえばいいんだ。』 美咲の案はまたまた的中。全く勉強もしないのに学年トップの成績となった。    そんな噂は学内を越え、他校にも広がった。 美咲はその度に他校の名簿を取り寄せては生徒と先生の氏名をラブノートに書き込んだ。美咲の噂は町内から市内、県内に広がるにつれ美咲を疎ましく思う人からの嫌がらせの電話や手紙、メールも増加していった。その度に氏名を調べ、ノートに書き込んだ。 「毎朝新聞の記者です。美咲さんですね。」 マスコミに知れ渡るようになり、嫌がらせは美咲が処理しきれない数に膨れあがった。 「このままじゃ日本、下手をすれば世界中の人々の氏名をノートに書き込まないと終わらない。とてもじゃないが無理。」美咲は限界を感じて落胆した。 美咲はやけ気味になり、ノートを両手で引きちぎろうとしたその時、美咲の手を誰かが掴んだ。 「これは皆の愛なのよ。せっかくの愛を自分の都合で踏みにじってはいけないのよ。これは私が預かっておくね。」あの時のおばあちゃんが現れ、そう言うともう姿はなかった。 次の日から美咲に平凡な生活が戻った。 「ま、これでいいか。」美咲はつぶやいた。
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