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「お母さんかお父さんどっちを殺してほしい?」
まさか僕の家に二択殺人の男がやってくるなんて。二択殺人とは、世間を騒がせている事件のことだ。夜中に寝ている子供の部屋に入って聞いてくる。『お母さんとお父さんどっちを殺してほしい?』と。お母さんと答えるとお母さんを殺して帰る。お父さんと答えるとお父さんを殺して帰る。どっちも嫌だと言うと子供を殺して帰る。二択殺人の被害は数知れず。知らない人はいないくらいだ。その二択殺人の男がまさか僕の家に来るなんて。 僕はびっくりして思わず泣いてしまった。
「さあ、どっちを殺してほしい?」
考えた末に僕は答えた。「・・・お母さん」
「お母さんでいいんだな?」二択殺人の男は聞いてくる。
「ごめんなさい。嘘です」僕は相変わらず泣いたまま答える。
「じゃあ、お父さんでいいんだな?」二択殺人の男は聞いてくる。
「ごめんなさい。嘘です」僕は相変わらず泣いたまま答える。
「どっちなんだい?」二択殺人の男は淡々と聞いてくる。
「うっ、うっ、うっ・・・」僕は泣いてしまって上手く話せなかった。
「さあ、どっちだい?」
僕は大きく深呼吸をして答えた。
「どっちもお願いします」僕は泣きながら土下座をした。嬉しくて涙が止まらない。その涙が両親から虐待されてついた傷に入ってしみた。土下座をした時も、蹴られて叩かれた体が悲鳴をあげていた。でも、心からお願いをしたかったから、土下座をした。
二択殺人の男はニヤっとした。
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