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俺はこの世界が嫌いだ。自由の無い、決まりきった命をただただ浪費する鳥籠の様な世界が。
俺はもう死ぬ。
結局世界を憎んだただの一人のちっぽけな人間だった。
何も出来ず、何も成せず、今日死ぬ俺の事なんか数分も経てば世界からさっぱり忘れられているだろう。
悔しさと後悔に奥歯をぎちりと噛みしめる。
「まだ………死……ない……」
無意識の内に声が漏れる。
不意に胸に重さを感じる。目線を上から下へ、俺の胸の上には綺麗な形の足が乗せられていた。
「まだあなたは死ねないの?」
少女の質問。俺は頷く。
「やり残した事があるから?」
頷く。
「この世界を変える様な英雄になりたいの?」
「な……り…た……い。」
にいっと少女が笑った。今までの純粋さが実体化した様な少女の顔が逆転し、蠱惑的な笑みを浮かべ。俺の胸を踏んでいた足をゆっくりとどけ口を俺の耳元に寄せる。
「この先どんな事が待っていようとも?」
甘く耳に絡みつく声で少女は語る。
「ああ……」
俺が肯定を口に出せたのか、空気となって消えてしまったのかはもう俺自身にも分からなかった。
きらきらと輝いていたガラスの光はもう俺の目には届いていない。
抗えない眠気に誘われる様に俺は目を閉じた。
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