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毎日、アッパーの町から捨てられる、ゴミを拾い日々を過ごす。それは生きる為のルールだった。腐臭が漂い初めている物、濁りきった水を飲まなければ生きる事はできない。
俺と同じ、スクラッパー達はそれになんの疑問を抱く事は無かった。ただそれが当たり前だったのだ。
そんな日々を俺は8年過ごした。
その8年は大きな時間だった。
この腐りきった世界でも多くの仲間ができた。
アッパーから捨てられる本を読み、身体を鍛え、ガラクタを組み立て、力を学んだ、手に入れた。
そして、今ここに立っている。アッパーとアンダーを大きく隔てる壁。
目前に広がる、色とりどり光と、天に向かい伸びる高層ビル群。
背後にはそれに相反する闇と地面に溶ける様に這いつくばるボロ屋。
俺はこれから世界を、ルールを、神を壊しに行くのだ。
「なに、カメラに向かって話しているんだ?」
横から声が掛かる。黒いボロボロのローブを身体に巻きつけ、顔には煤を塗った細い長い男がいた。
「ああ、これから先はいつ死んでもおかしくないからな。俺って人間がいた事を残して置こうと思ってな」
「なんだよ、もう死ぬ気なのか?」
黒い男はははっとせせら笑う。
「いや、これは遺言じゃないさ。」
アーサーは薄く笑う。
「英雄の始まりの言葉として、歴史に永遠に残るのさ。」
壁の上にあった2つの黒い影は光に吸い込まれる様に消えた。
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