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神崎が試作装置から取り出したデーターを分光解析専用サーバーに移して、分光解析装置のスタートボタンを押すと、PCのモニター画面に《処理中》の文字が表示された。
「さて、今のうちにP社の評価サンプルをエックス線分析するか」
神崎がP社の評価サンプルをエックス線分析する。
「待てよ、この際、ブラックウエハもエックス線分析してみるか……」
フェニックス社の解析依頼書にエックス線分析の要望項目は無かったが、神崎は炭素皮膜の下にある回路パターンが見たくなった。
神崎はP社の評価サンプルのエックス線分析を手短に片付けて、ブラックウエハをエックス線分析装置にセットした。そして、小さな声で「契約違反だけどな……」と呟いて、エックス線分析装置のスタートボタンを押した。
エックス線分析装置が軽いモーター音を響かせて、ブラックウエハのスキャンニングを開始する。
「あれっ、嘘でしょう、そんな……?」
神崎がエックス線分析装置のモニター画面を覗き込むと、エックス線分析装置のモニター画面には回路パターンの映像が全く映っていなかった。神崎は炭素皮膜の下に回路パターンが有ると予想していたのだが、実は炭素皮膜の下に回路パターンは無かったのだ。
「この炭素皮膜はただのお遊びなのか……単純にウエハ表面を保護する目的で加工された保護膜なのだろうか?」
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