第二章 侵入者

1/8
前へ
/85ページ
次へ

第二章 侵入者

 連れの金城剛司は高校の同級生で親友(マブダチ)だ。学生時代、金城は柔道部でインターハイに何回も出場していて、連続優勝の記録も持っている。筋肉質でバリバリの体育会系。金城は体育大学に進学して工業高校の体育教師をしていたが、何を思ったか今は教師を辞めて探偵をしている。  ――駅の跨線橋(こせんきょう)を上り下りして駅前商店街に出ると、行きつけの居酒屋が見えた。  神崎は店の暖簾(のれん)をくぐって金城の姿を探した。  金城が店のカウンター席に座って、楽しそうに笑いながら店長と話をしている。 「あっ、神ちゃん、いらっしゃい!」 「おお、神崎、こっち、こっち」  店長がこちらを向いて手を上げると、金城は手招きをして神崎を呼んだ。  金城は笑いが止まらないらしく、涙を流して腹を抱えている。  神崎がカウンター席に座ると、金城は自分でグラスを取って神崎にビールを注いだ。 「金城、何がそんなに可笑しいんだ?」 「いや、店長が冗談ばっかり言うからさ、笑いが止まらなくて、もう腹が痛くって大変だよ」 「へぇー、そうなのか」 「店長は昨日の新装開店で『客が駅の改札口まで並んだ』って言うんだよ」     
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加