第二章 侵入者

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「えっ、凄いじゃないか、それは快挙だね」 「神崎、よく考えてみろよ、この店から駅まで何メートルある? 五十メートル以上あるぜ。嘘だよ、嘘、こんなチンケな居酒屋から駅の改札口まで並ぶわけがないじゃないか」 「ああ、そうか」 「それに駅前までなら、まだ許せるんだけど、『駅の改札口』だぜ、駅の改札口は跨線橋の中にあるんだから、それは絶対に有り得ないよ」 「あはは、そりゃそうだな」  金城の話を聞いて神崎も腹を抱えてゲラゲラと笑った。  神崎と金城はこの店の常連客だ。二人は日頃のストレスをこの店でよく発散させている。二階建ての小さな店だが、安くて旨くて店長が面白いので結構流行っている。  店長の冗談話で二人が盛り上がっていると、二階の座敷から誰かが降りて来た。 「あっ、神崎さん見っけ」  神崎が振り返ると、後ろに田町が立っていた。 「あれっ、田町じゃないか? お前は先に帰ったんじゃないのか? こんな所で何してんだ?」 「へへぇ、今日は課長がご機嫌なんで、事務所のみんなを集めて飲み会っすよ」 「へぇー、そうなんだ」  「神崎さん、聞きましたよ、例の評価レポートの件!」 「えっ」 「もう、中村課長が神崎さんをベタ褒めなんだから~神崎さんも二階に来たら?」     
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