第二章 侵入者

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「今日はダメだよ、連れと飲んでいるんだからさー」 「あら、隣のお兄さん、神崎さんのお友達? 初めまして、神崎の愛人、田町由香里で~す。よろしくっす!」  田町が右手を上げて軽くウインクする。 「えっ、神崎! こんな美人の愛人がいたのか? 俺はマジ悔しいぞ!」 「こら、田町! 嘘を言うな!」  田町はへへっと笑いながら少し舌を出して、化粧室の方に走って行った。 「――ったく」  神崎が振り返ると、金城は化粧室を見つめて固まっていた。 「いい! とってもいい! 由香里ちゃん! す・て・き!」  ぶっ!  神崎が飲みかけのビールを口から噴き出す。  金城はどうやら本気らしい。 「えっ、マジか? 止めた方がいいと思うけど……」 「ほんとに、お前の愛人じゃないんだろうな?」 「ちがう、ちがう、ただの同僚だ」 「じゃ、俺が彼女をお嫁に貰っちゃう」  田町が化粧室から出てくると、金城は椅子から立ち上って田町に名刺を渡した。 「金城剛司と申します。よろしくお願い致します」 「……?」 「由香里さん、もし良かったら、俺のGTRで今度一緒にドライブでも如何でしょうか?」  ※GTRは日産のスポーツカーで、スカイラインGTRの事。     
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