第二章 侵入者

4/8
前へ
/85ページ
次へ
 田町が受け取った名刺も見ずに、金城の顔を三秒程ポカンと見つめる。 「無理! 以上!」  田町は金城に即答すると、神崎の頭を右手でポンポンと軽く叩いて階段を上って行った。  金城が階段を見つめて、また固まっている。 「いい! とってもいい! 由香里ちゃん! そんなに照れなくってもー」  ぶっ!  神崎が飲みかけのビールをまた口から噴き出す。 「はぁー? お前、どんな感覚してんだよ! 俺には理解出来ない!」  神崎が両手を上げて店長の顔を見ると、店長は爆笑していた。  ――次の日の朝、神崎は少し寝過ごして会社に出社した。 「ふぅ、ギリギリセーフ」  神崎が息を切らして居室のドアを開く。  定例の朝会が終わると、神崎は田町に作業記録のPC登録を頼んだ。  ※PCはパソコンの事。 「田町、昨日の作業記録をPCに入力してくれよ」 「昨日の作業記録って? 私、神崎さんの業務報告はまだ聞いてないっすけど」 「記録表に記入してあるよ。昨日、別の事務員が書いてくれたんだ」 「えっ、別の事務員っすか?」  田町がデスクの上から赤いファイルを取って開く。 「あれっ、ほんとだ。記入してあるっすね……誰っすかね?」 「『誰っすかね?』って、派遣かアルバイトの女子事務員がいるんだろう?」     
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加