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神崎は慌てて評価室から飛び出すと、クリーンウエアを脱いで会議室に向かった。
会議室に向かう途中、技術営業課の中川と擦れ違った。
(そうだ、例の評価物件は中川の依頼だったな、何でも特別な依頼だとか……)
神崎が中川の顔を眺めて心の中で呟く。
「おい中川、例のウエハ評価の件で来客対応なんだが、お前、何か聞いているか?」
「えっ、聞いていませんよ。先輩、あれは内緒の評価依頼品なんですが」
中川は高校の後輩で、たまたま同じ会社に入社したのだが、いまだに神崎の事を先輩と呼んでいる。
「『内緒の評価依頼品』って、何だよそれ……」
「実は評価設備の大口注文を取る為に、別件でウエハの評価サービスを引き受けちゃったんですよ。中村課長には内緒だったんですけど、バレちゃいましたか?」
「バレちゃいましたよ。たぶんね――」
神崎が冗談半分で中川に答えると、中川は両手を合わせて片目を瞑りながら神崎に会釈した。
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