第二章 侵入者

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 神崎は本日分の評価サンプルを保管庫に片付けると、返却予定の評価サンプルを保管庫から取り出して梱包作業を始めた。  評価サンプルはそれぞれ個別のウエハケースに収められていて、P社は汎用透明プラスチックケースで、新和開発社は黒色の帯電防止プラスチックケースだ。  神崎がウエハケースをアルミラミネート袋に入れて真空包装機にセットすると、真空ポンプの動作音がして真空メーターの値が上がった。そして、しばらくすると真空包装が完了して装置が自動停止した。 「梱包完了、次は搬出だ」  神崎が搬出ブースに評価サンプルを置いて扉を閉めると、評価サンプルは自動的にクリーンルームの外へ搬出された。  神崎が田町のPHSに電話を掛ける。 (田町はもう帰ったのかな?)  PHSは発信音を出し続けたが応答は無かった。 (今日はさすがに誰もいないか……)  神崎は評価室を出て更衣室で作業服に着替えると、表の通路から評価サンプルを取り出した。 「資材部の宅配最終発送時間は午後十時だったかな?」  神崎は腕時計で時間を確認すると、評価サンプルを両脇に抱えて解析技術課の事務所に向かった。  事務所は部屋に明かりが無く非常灯が点灯して天井照明が消えている。     
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