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「実は評価装置に不具合があって、サンプルを再測定したのですが、前回の評価レポートに無かった元素が検出されました」
「どんな元素かね?」
「ガドリニュウムです」
「ガドリニュウム? それはまた珍しい元素だな」
「ええ、造影剤とか超電導磁石に使用される材料の様です」
「そうか、まあ、最悪、顧客に侘びを入れて再評価しないとダメだな」
「そうですね、当然、無償になりますが……」
神崎は顎を撫でながら中村課長に答えた。
「データーの復旧は可能ですか?」
神崎が振り向いて情報システム部の担当者に尋ねる。
「メンテナンスを毎月していますので、メンテナンスサーバーに記録は残っていると思います。ただし、メンテナンス日以降のデーターは無理ですね」
「前回のメンテナンス日はいつですか?」
「確か、二週間前です」
「二週間分の仕事が水の泡か……」
神崎が肩をガクッと落とす。
「アクセスコードはA00135、氏名は星野由美、部署は技術営業課です」
情報システム部の担当者は、セキュリティ登録リストからアクセス者を割り出した。
「なんだ、隣の部署じゃないか」
中村課長は事務所のドアを開けると、急いで技術営業課の居室に向かった。そして、技術営業課の課長としばらく話し込んでから部屋に戻って来た。
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