第三章 ハッカー

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「実は評価装置に不具合があって、サンプルを再測定したのですが、前回の評価レポートに無かった元素が検出されました」 「どんな元素かね?」 「ガドリニュウムです」 「ガドリニュウム? それはまた珍しい元素だな」 「ええ、造影剤とか超電導磁石に使用される材料の様です」 「そうか、まあ、最悪、顧客に侘びを入れて再評価しないとダメだな」 「そうですね、当然、無償になりますが……」  神崎は顎を撫でながら中村課長に答えた。 「データーの復旧は可能ですか?」  神崎が振り向いて情報システム部の担当者に尋ねる。 「メンテナンスを毎月していますので、メンテナンスサーバーに記録は残っていると思います。ただし、メンテナンス日以降のデーターは無理ですね」 「前回のメンテナンス日はいつですか?」 「確か、二週間前です」 「二週間分の仕事が水の泡か……」  神崎が肩をガクッと落とす。 「アクセスコードはA00135、氏名は星野由美、部署は技術営業課です」  情報システム部の担当者は、セキュリティ登録リストからアクセス者を割り出した。 「なんだ、隣の部署じゃないか」  中村課長は事務所のドアを開けると、急いで技術営業課の居室に向かった。そして、技術営業課の課長としばらく話し込んでから部屋に戻って来た。     
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