第三章 ハッカー

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「みんな仕事に戻ってくれ! この件は俺が責任を持って対応する!」  中村課長が指示を出すと、みんなはデスクに座って仕事を始めた。そして、情報システム部の担当者は自分の部署に戻って行った。 「神崎と田町は、こっちに来てくれ」  中村課長が右手を振って二人を呼ぶ。 「星野由美はアルバイト社員だそうだ。勤務時間は午後五時三十分から午後八時三十分で、彼女はまだ出勤していない。今、人事に連絡先を問い合わせているところだ。神崎は二週間前からの業務を出来る限りやり直してくれ。顧客への対応は俺がする。田町は他にもっと消されたファイルが無いか、時間が掛かってもいいから調べてくれ」  中村課長は二人に業務指示を出すと、また技術営業課の居室に向かった。 「星野由美? イニシャルはYHか?」  神崎が胸のポケットから昨日のハンカチを取り出してイニシャルを確かめる。 「イニシャルMAだよな、このハンカチ……」  神崎はしばらくハンカチを見つめた。 「それ、何っすか?」  田町がハンカチを覗き込む。 「えっ、いや、何でもないよ」 「あっ、怪しいっすね、ピンクの刺繍が入ってるじゃないっすか! 『これ』っすか?」  神崎がハンカチを隠すと、田町は右手の小指を立てて目を細めた。 「違う、違う」     
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