第三章 ハッカー

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「じゃーなんっすか!?」  神崎が田町に右手を小さく振ってごまかすと、田町はちょっと不服そうに神崎に尋ねた。 「まあいいじゃないか。それより、仕事! 仕事!」  神崎が自分のデスクに座って、業務記録の確認を始める。 (さて、二週間前からの業務か、これは大変だな。ウエハの構造解析が三件、熱応力評価が二件、接合評価が五件、ああ、こりゃ頭が痛いな)  神崎が頭を抱えて振り向くと、田町も頭を抱えてPCのモニター画面を睨んでいた。  ――午前十時、情報システム部の担当者から田町のPHSに連絡が入った。 「はい、田町です」 「情報システム部の新庄です。技術サーバーのファイル復元が完了しました。それから直近二週間分のデーターは、ある程度の復元が可能でした。田町さんの方で確認してみて下さい。削除されたデータの九十パーセント位は復元出来ています。残り十パーセントのファイルは、物理記録領域に別のデーターが上書きされていて、復元出来ませんでした」 「ありがとう御座います。助かりました」  田町は情報システム部の担当者に礼を言うと、紙の記録表を確認して電子ファイルの検索を始めた。 「神崎さん、ファイルの復元リストです」     
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