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「よし、フェニックス社の営業部に電話をして、提出済みの評価資料を返却してもらうとするか」
神崎は取引先の名刺入れをデスクの引き出しから取り出して、PHSでフェニックス社の営業部に外線電話を掛けた。
「はい、フェニックス社営業部です」
電話を受けたのは、フェニックス社営業部の女子事務員だった。
「もしもし、新光技術工業社解析技術課の神崎と申しますが、御社営業部長の猟田様を御願い致します」
「はっ? 神崎様、失礼ですが、もう一度名前を御願い致します」
「営業部長の猟田様です」
「神崎様、申し訳御座いません、弊社の営業部長は田代で御座います。田代ならおりますが」
「えっ? 田代部長様ですか?」
「はい、田代です」
「私が御社から頂いた名刺には、《営業部 部長 猟田博久》と書かれているものですから」
「少々お待ち下さい。猟田博久ですね?」
「はい」
しばらく返事が帰って来ない。
「神崎様、申し訳御座いません。弊社に猟田博久と言う社員は居りませんが……」
「そうですか?」
女子事務員の返答に神崎が戸惑う。
「分かりました。御社の田代部長様で結構です」
「では、田代に電話を御つなぎ致します。少々お待ち下さい」
女子事務員が田代に電話を転送すると、電子音が鳴って直ぐに電話がつながった。
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