第三章 ハッカー

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「お待たせ致しました。フェニックス社営業部の田代で御座います」 「もしもし、新光技術工業社解析技術課の神崎と申します」 「毎度、御世話になります。神崎様」 「えーと、新和開発社様のウエハ評価の件なんですが」 「はい」 「大変申し訳ないのですが、新たに追加評価が発生致しまして、評価資料の再作成が必要となりましたので、提出済の評価資料を一旦弊社に返却願えませんでしょうか? もちろん費用は無償で対応させて頂きます。いかがでしょうか?」  神崎は顧客に失礼が無い様に丁重な対応を取った。もちろん、自社の内部事情は話さない。技術データーの紛失を顧客に知られると自社の信用が台無しになるからだ。 「新和開発社様のウエハ評価ですね。弊社の注文管理ナンバーを教えて頂けますでしょうか」 「注文管理ナンバーは……」  神崎がノートのページを開いて注文管理ナンバーを調べる。 「注文管理ナンバーは、A560401です」 「A560401ですね、分かりました、直ぐに調べさせて頂きます。こちらから折り返し御電話を差し上げますので少々お待ち下さい」 「お願い致します」  しばらくするとPHSに外線が入った。 「はい、神崎です」     
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