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「神崎様、お待たせ致しました。フェニックス社営業部の田代で御座います。御依頼の件ですが、弊社の受注管理課に確認したところ、注文管理ナンバーA560401は見当たりませんでした。注文管理ナンバーの間違いではないでしょうか?」
「いえ、確かに注文管理ナンバーはA560401で、ウエハの構造解析依頼となっています」
「神崎様、それと、新和開発社様のウエハ評価はここ半年程、弊社に注文が入っておりません」
「そうですか、分かりました。御対応どうもありがとう御座いました」
神崎は電話を切ると首を傾げた。
「どうかしましたか? 神崎さん」
「いや、変なんだよ、フェニックス社はブラックウエハの評価を依頼していないって言うんだ」
「えっ?」
「それに、フェニックス社の営業部長と名乗る男は偽者の様なんだ」
「それじゃあ、その男は誰っすか?」
「それは誰か分からないけれど、ブラックウエハの評価データーが盗まれた事は確かだ」
神崎が腕を組んで田町に答える。
「そうだ、受注を取ったのは中川だから、彼に聞いてみよう」
神崎は事務所のドアを開けて技術営業課に向かった。
――技術営業課居室。
中川は事務所のデスクに座って何処かに電話を掛けていたが、神崎の顔を見ると直ぐに電話を切って椅子から立ち上がった。
「中川、ちょっと話があるんだが」
「先輩、俺も話があるんですよ、フェニックス社の営業部長と全然連絡が取れないんですよね」
「何時から?」
「昨日からです」
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