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「フェニックス社の営業部長って、こいつか?」
神崎が中川に猟田の名刺を見せる。
「そうです。昨日までこの名刺の携帯に連絡をしていたんですけど、今日はさっぱりつながらなくて」
「中川、こいつはフェニックス社の営業部長じゃないぞ! 偽者だ!」
「またまた、先輩、冗談は止めましょうよ」
「本当だって、今、フェニックス社に電話をして確認したんだ。営業部長は田代という男だ」
「えっ、じゃあ、俺の三千万円の商談はどうなるんですか?」
「そんなの嘘に決まってるだろう」
「えっ――!」
中川が腰を抜かして床にへたり込むと、神崎は中川を抱えて椅子に座らせた。
「まあ落ち着け、命を取られたわけじゃないだろ」
「そりゃそうですけど、これじゃあ、俺のサラリーマン人生も早々に終わりですよ」
「大丈夫、この件は公にならないよ」
「どうして?」
「よく考えてみろよ、まだ損害は何も出ていないじゃないか。それに技術情報の盗難事件を会社が外部に発表する事はないさ、それより新和開発社の営業部門の連絡先を教えてくれ。発注が本当にあったかどうかを確かめてみたい。フェニックス社はただの中間業者で、ウエハの構造解析を依頼したのは新和開発社だからな」
「そうですね、評価サンプルは存在していますからね」
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