第三章 ハッカー

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「それに、評価サンプルは最新の大口径ウエハだ。大口径ウエハを作れるメーカーは日本にそうはない」  中川はPCに厳秘のパスワードを入れて、顧客リストの検索を始めた。 「先輩、ありました。新和開発社技術営業部門の電話番号です。俺が電話しましょうか?」 「ああ、そうだな、お願いするよ」  中川が新和開発社の技術営業部門に電話を掛ける。 「毎度、御世話になります。新光技術工業社技術営業課の中川と申します。実はですね――」  通常、半導体の一流メーカーがウエハの開発試作評価を外部委託する事は無い。あったとしても、秘密保持契約を交わして情報を隠している。 「おい、中川、電話を代わってくれ」 「ちょっと待って下さい。はい、どうぞ」 「もしもし、新光技術工業社解析技術課の神崎と申します。何時も御世話になります。何かの手違いだと思うのですが、新和開発様からサンプル評価の御依頼を一件受けておりまして――」  神崎は新和開発社の技術営業部門から評価委託の情報を聞き出した。  新和開発社の回答は外部への評価委託は出していないとの事だった。 「そうですよね、大変失礼致しました。弊社、技術営業課の手違いかと思います」 「……?」 「その評価サンプルなんですが、実は真黒なウエハでして……」 「えっ! 真黒なウエハだって?」     
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