第三章 ハッカー

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 技術営業担当者の声色が急に変わった。 「もしもし、その評価サンプルは、現在、新光技術工業社様が保管されているのですか?」 「いえ、もう、評価依頼元の顧客に返却致しました」 「そうですか……分かりました。何れに致しましても、弊社から新光技術工業社様への評価依頼はありません」 「はい、承知致しました。御対応ありがとう御座いました。失礼致します」  神崎が技術営業担当者に丁重な対応を取って電話を切る。 「中川、新和開発社は本当に評価依頼を出していない様だ」 「そうみたいですね、先輩」 「ただし、ブラックウエハの研究は、きっとこの会社がやっているんだよ。極秘の様だな」 「極秘のウエハが、なぜうちの会社に回って来たんですかね?」 「理由は分からないが、たぶん社内の内部リークだろう」 「内部リーク?」 「そう、誰かが極秘のウエハを持ち出したんだよ」 「何の為にですか?」 「製造工法を解析する為さ」 「製造工法?」 「中川、聞いて驚くなよ、ブラックウエハの値段は一スライスで推定一千億円だ」 「えっ、先輩、それ本当ですか?」 「ああ、本当だとも、このウエハの量産技術を確立すれば、巨額な利益を手に入れる事が出来るんだ!」     
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