3人が本棚に入れています
本棚に追加
神崎が振り向いて田町に話し掛けると、田町は呑気な顔で小さく右手を振って神崎に答えた。
――居酒屋。
「いらっしゃい!」
居酒屋の暖簾をくぐると、若い店員が二人に声を掛けた。
「あれっ、今日は空いてますね?」
「いえ、いつもこんなもんですよ。まだ、時間が早いですからね」
「ああ、そうか、俺の来店が早いのか」
神崎がカッターシャツの袖をまくって腕時計で時間を確認する。
「カウンター席にしますか? テーブル席にしますか?」
「今日はカウンター席でいいよ」
店員が席を尋ねると、神崎はカウンター席を指差した。
二人がカウンター席に座ると、店員は二人にお絞りを差し出した。
「取りあえず、生ビールと枝豆」
「はい、注文喜んで! 生ビールと枝豆入ります!」
店員が厨房に向かって威勢よく声を掛ける。
「あれっ、神崎さん、連れを待たなくていいんっすか?」
「ああ、いいんだ、金城は仕事の都合で今日は少し遅れて来るからね、喉が渇いて待っていられないよ」
神崎がお絞りで手を拭きながら田町に答える。
「田町、乾杯しようか」
「神崎さんと二人で乾杯っすか、嬉しいっすね!」
「それじゃあ、乾杯!」
二人がグラスをカチンと合わせて一杯やり始めると、店の奥から店長が出て来た。
「ああ、店長、こんばんは」
最初のコメントを投稿しよう!