第四章 ハンカチの持主

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 神崎が振り向いて田町に話し掛けると、田町は呑気な顔で小さく右手を振って神崎に答えた。  ――居酒屋。 「いらっしゃい!」  居酒屋の暖簾をくぐると、若い店員が二人に声を掛けた。 「あれっ、今日は空いてますね?」 「いえ、いつもこんなもんですよ。まだ、時間が早いですからね」 「ああ、そうか、俺の来店が早いのか」  神崎がカッターシャツの袖をまくって腕時計で時間を確認する。 「カウンター席にしますか? テーブル席にしますか?」 「今日はカウンター席でいいよ」  店員が席を尋ねると、神崎はカウンター席を指差した。  二人がカウンター席に座ると、店員は二人にお絞りを差し出した。 「取りあえず、生ビールと枝豆」 「はい、注文喜んで! 生ビールと枝豆入ります!」  店員が厨房に向かって威勢よく声を掛ける。 「あれっ、神崎さん、連れを待たなくていいんっすか?」 「ああ、いいんだ、金城は仕事の都合で今日は少し遅れて来るからね、喉が渇いて待っていられないよ」  神崎がお絞りで手を拭きながら田町に答える。 「田町、乾杯しようか」 「神崎さんと二人で乾杯っすか、嬉しいっすね!」 「それじゃあ、乾杯!」  二人がグラスをカチンと合わせて一杯やり始めると、店の奥から店長が出て来た。 「ああ、店長、こんばんは」     
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