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「おおっ、珍しいな! 神ちゃん、女連れじゃん! その綺麗な娘は彼女かい?」
「店長、この娘は職場の同僚ですよ」
店長が神崎を冷やかすと、神崎は右手を小さく振って店長に答えた。
「愛人の田町由香里で~す。店長よろしくっす!」
ぶっ!
田町が顔に笑みを浮かべて店長にピースサインを出すと、神崎は飲みかけのビールを口から噴き出した。
「あっ、思い出した。金ちゃんを一撃でノックアウトした娘だ!」
店長が田町を指差してニコッと微笑む。
「『愛人の田町由香里で~す』って、俺だからいいけど、他人だったら本気にするぞ。その冗談あっちこっちでやっているんだろう」
「バレたっすか」
「何人かその気になったんじゃないのか?」
「三人位かな」
「えっ、マジで!」
「ふふふ、冗談ですよ。でも、神崎さんならマジでOKっすよ。何なら今日お持ち帰りしますか?」
田町が軽くウインクをすると、神崎はカウンターから肘を滑らせて、ひっくり返りそうになった。
「あはは、言うね、由香里ちゃん!」
店長は笑いながら手を叩いて喜んだ。
――午後七時。
金城が暖簾をくぐって店の中に入る。
「店長、毎度!」
「おっ、金ちゃん、いらっしゃい! 奥で二人がお待ちだよ!」
「二人?」
金城は黒縁のサングラスを外して神崎の姿を探した。
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