第一章 シークレットナイトライド

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 神崎は両手を上げて伸びをすると、窓側に視線を向けて通路を進んだ。通路に視線を戻そうとした時、部屋の奥から出入口に向かう女子社員の姿が見えた。  彼女が部屋のドアを開くと、神崎と彼女の目が合った。気品のある顔立ち、抜群のスタイル、磁力的な眼差し。彼女が甘い香水の香りを漂わせながら通り過ぎると、神崎は彼女に見惚れた。 「あんなに綺麗な女子社員、うちの会社にいたかな?」 「神崎さん、何をしているんっすか?」  神崎が振り向くと、解析技術課の田町由香里が立っていた。  田町は神崎と同じ課で、解析技術課全体の評価進行を管理している技術管理事務員だ。今年入社の新入社員で、彼女も結構な美人だが、男兄弟の下で育ったらしく性格が男っぽい。管理職連中の前では一応の丁寧語で話しているが、現場では普通に今時の言葉で話している。 「今日お願いしたP社のサンプル評価は終わりましたか?」 「いや、あと、もうちょっとなんだよ」 「あのサンプルの評価結果を早く知りたいんですよね~お願いしあっす!」 「はいはい、お願いされあっす!」  田町が右手を上げて神崎に催促をすると、神崎は両手を上げておどけた仕草で彼女に答えた。  神崎は通路をもうしばらく歩いて更衣室に入ると、クリーンウエアに着替えてから、エアーシャワー室を通り抜けて評価室に向かった。     
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