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「吉田君、さっきの話なんだけどさ、このブラックウエハを再検査する時間はあるかな?」
神崎がそう言うと、吉田は作業を止めて設備の横に置いてある工程表を確認した。
「今から一時間位ならいいですよ。設備の組立スケジュールは若干先行していますので大丈夫です」
吉田が神崎の技術評価の為に試作装置の設定条件を変更する。
神崎が評価サンプルを試作装置にセットして計測スイッチを入れると、試作装置は評価サンプルをチャンバー(反応器)に移送して真空処理を開始した。測定器のモニター画面には分光波長の測定データーが表示されている。
神崎は測定ターゲットを狙って電子ビームの位置調整を始めた。
――しばらくして、測定が終わった。
「吉田君、ありがとう」
神崎が吉田に礼を言って、試作中の評価装置からウエハ評価サンプルと測定データーを取り出す。
「ところで、吉田君、ピントのズレ量はどれ位だったのかな?」
「五ナノ位です」
「五ナノか、まあ、誤差の許容範囲内だな」
※一ナノ=千分の一ミクロン=百万分の一ミリ
神崎が吉田に右手を上げてOKサインを出すと、吉田は計測モードを元の位置に合わせて、試作装置の再調整を始めた。
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