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「えっ」
「お姉さん、綺麗だから大サービス」
「あっ、ありがとう御座います」
美姫が恐縮して缶コーヒーを受け取ると、彼は微笑みながら右手を軽く上げて仲間の元に戻って行った。
無人駅を通り抜けてホームに入ると、遠くから踏切の警報音が聞こえた。
正午を過ぎた昼間のホームに人影は無く、電車の乗客は美姫だけだ。
ポーンと効果音が鳴って、駅の構内スピーカーから電車の運行アナウンスが入る。
『普通列車、XX行きが、XX駅を発車致しました。しばらくお待ち下さい』
しばらくして、二両編成の普通電車が駅に到着した。
美姫は電車のドアを手で開けて客室に入ると、四人掛けのクロスシートに手荷物を置いて窓側の席に座った。そして、電車がプァーンと警笛を鳴らして静かに走り始めると、振り向いて缶コーヒーをくれた職員の姿を窓から眺めた。
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