第一章 旅立ち

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 叔父夫婦は、とても親切だ。二年前に両親を亡くしてから、美姫は京都の叔父夫婦と一緒に暮らしている。美姫の両親が亡くなった時、叔父夫婦には三歳の長男と〇歳の長女がいて、育児で大変な時期だった。叔父の浩史は京都の中小企業に務めるサラリーマンで、三島家は決して裕福な家庭では無かったが、叔父夫婦は喜んで美姫を迎えてくれた。そして、それから二年の歳月が流れた。 「あっ、貨物電車や!」  甥っ子の健太が一番線を指差すと、貨物列車が駅の〇番ホームと二番ホームの間を駆け抜けた。  ※京都駅には一番ホームが無い。一番線は貨物列車の通過用線路。 「カンガルー! カンガルー! お姉ちゃん、カンガルー!」  姪っ子の結衣は、コンテナに塗装されたカンガルーの絵を見つけて、美姫のスカートを引っ張った。 「ほんと、赤いカンガルーさんね」  美姫がしゃがみ込んで結衣を抱っこする。 「あっ、ペリカン! お姉ちゃん、次はペリカンさん!」  別のコンテナに塗装されたペリカンの絵を見つけると、結衣は小さな指を立てて、首を傾げながら嬉しそうにニコッと微笑んだ。  貨物列車がカタンカタンと音を立てて一番線を通過する。 「お姉ちゃん、いつ帰って来るん?」 「五月の連休に帰って来るわよ、健ちゃん」 「ふーん、五月か、はよ帰って来てな、テレビゲームひとりでやったら、つまらへんし」 「はいはい」  健太が美姫の顔を下から覗き込むと、美姫は結衣を抱っこしながら、健太の頭をポンポンと優しく叩いた。  しばらくすると、ホームのスピーカーから列車の接近アナウンスが入った。     
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