覚醒せし天才たる私の記録

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 そこで実際にやってみた。  プロ手前までいった男が全力で蛍光灯の紐を使用してシャドーボクシングだ。  ジャブからフックを混ぜてワン・ツー・スリーとコンビネーションを放ち、戻ってきた紐を掻い潜ると絶妙なタイミングの顎へのアッパーとボディーへのショートアッパーの連打。  しかも、ラスト20秒は全力のラッシュを叩き込む事に成功した。  そしてこれを10ラウンド程続けたとき私は気がついたのだ。  この充足感、この多幸感、この解放感。  そのどれもが間違いなく、かつて私がボクシングをやっていた頃と、寸分たがわぬほどのものだったのだ。  そして本題だ。  私なら、もしかしたら、やれるのでは無いか? そう気がついてしまったのだ。  そう、私なら、天高く昇りやがて大地へと降り注ぐ、()()()を全て避け切る事で、傘を差さずとも濡れずに済む事が出来るのでは無いかと、考えたのだ。  かつて多くの男達が挑んだであろう難関である。  バカバカしい事も難しい事も良く分かっている。  だがしかし分かって欲しい。     
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