1日目.禁じられた遊戯

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 ぴぴっ、通信機が信号を発した。 「許可する」  イム・ベーダーは独り言のようにつぶやいた。何かが始まる、久麗爺は歯を鳴らした。  テレビの画面が変わった。23号機を地上付近から撮っている。ぐるり向きを反転し、内陸方向へ進み始めた。もちろん超音速だから、ものの数分で黄海まで達してしまう。  イム・ベーダーは無言でテーブルの旭川名菓のクッキーを手にした。ぱり、口で砕く。湯飲みの茶を一気飲みに飲み干した。  23号機は高層ビルが建つ街の上で停止した。北朝鮮の首都、平壌を機体の影30キロ四方で包み込んだ。  これからだ、久麗爺は息を呑む。  23号機の尾部が降下する。全体が縦に立つ、機体の一部が分離して変形を始めた。それは巨大な二本足の人型ロボットへ姿を変えた。  おおおっ、久麗爺は歓声を上げていた。  身長30キロの巨大ロボットの足が、超音速で平壌の街を踏み潰して立った。衝撃波が足元から円周状に広がる。地上から見れば、膝から腰へと何層もの雲を貫き、頭部は青くかすんでいる。  足元には薄い茶色の雲がある。街をつぶした土煙だ。実際には高さ100メートルを超える煙だろうが、身長30キロからすれば落ち葉のように薄く見える。 「たた、太郎、見ろ、ロボットだ! くっそおうっ、この手があったか、やられたあ!」  久麗爺は両手を握りしめて興奮する。太郎は恥ずかしさに孫を辞めたくなった。 「これぞ、正しく男のロマン! 操縦機を小脇に抱えて、行けっ鉄人、と叫んだ子供の頃を思い出す。いや・・・まて、あの大きさなら、その重さは・・・なぜ、足が地面に沈まない。地面に立っていると言うより、重力制御で浮いていると言うべきか。あの腕も、肩からぶら下がっているのではなく、重力制御でその位置にあるのだろう」  少し興奮が冷め、久麗爺はロボットを分析する。 image=510469478.jpg
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