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「なかなか科学的な見方だ。実に、その通り。脚部が地面にかける圧力は、1平方メートルあたり1トン程度だ」
イム・ベーダーは静かに答えた。
「1平米あたり1トンね。それくらいの荷重なら、普通の道路のような地面なら耐えられる」
ふむふむ、久麗爺は指を使って巨大ロボットとなった23号機を測る。注目したのは足のサイズ。長さは身長の7分の1くらい、約4キロ半、幅は2キロくらい。足の裏の面積は片足で9平方キロとして、両足で1800万トンの重量圧力を平壌の地面に与えていると推測できた。北朝鮮の建物は1800万トンを支えられたか、真っ平らにプレス整地されてしまったか、知りたくもあり知りたくもなし。
「乗ってみたいかね?」
「えっ、乗れるの!」
イム・ベーダーの申し出に、久麗爺の首がのびた。太郎が袖を引くと、逆に腕をつかんで引きつけた。
裏玄関から外に出た。久麗爺と太郎、イム・ベーダーの三人で並んだ。
イム・ベーダーが腕輪をいじると、急に風景が変わった。いわゆる転送と言うやつか、ややショックがあったが、気分は悪くない。あまりに簡単に移動できて、それが非現実的な感覚だ。
「ううむ、いよいよSF空間に入ってしまったか」
金属質の部屋を見渡し、久麗爺はうなった。転送室と言うべき部屋なのだろうか。高鳴る胸を押さえ、転送メカを探るが、つるんとした壁しか見えない。
カチリ、金属音がして、扉が開いた。
やや細身の宇宙人が出迎えだ。若く見える、その頭には少し小ぶりな角があった。角の形や大きさには個人差が出るようだ。
「その角、どうしたのだ?」
イム・ベーダーが若いのに問う。よく見れば、彼の角は根元に輪が付けられている。
「実は、さっき抜けかかってしまって。こんな物で抑えていますが、少しぐらついております」
「良くないな。直ぐ診断書を取り、休暇を申請したまえ」
はは、若い宇宙人は頭を下げた。上官の命令に従う。
久麗爺は首をひねった。たかが角くらいで、と思うのは地球人の感覚。彼ら宇宙人たちには、頭の角は特別な意味があるのだろう。
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