1日目.禁じられた遊戯

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 小部屋に案内された。エレベーターのような感じ。 「ブリッジ、サード」  イム・ベーダーが言うと、部屋がゴトゴト揺れた。軍事施設だけに、乗り心地は二の次か。  しゅっ、エレベーターのドアが開いた。明るい部屋があった。しかし、他に誰もいない。  丸い壁に囲まれ、真ん中にテーブルとイスがある。付属している機器を見れば、何かの操作をする席のようだ。テーブルの前方には窓と多目的ディスプレイ、外の風景と23号機の見取り図が映っている。 「ここは来客用の部屋だ。そこで、この23号機を操縦できる」 「ここで!」  久麗爺はイスに手を置き、テーブルのスイッチを見た。  来客用と言ったので、本来の操縦室は別にあると判断できた。戦艦大和には操舵室が3カ所もあり、戦闘の状況に応じて使い別けていた。それと同じだろう。  前方ディスプレイには外の景色が映っていた。高度30キロともなれば、水平線の上は暗い。宇宙が目前の高度である。雲は高度10キロくらいまで、23号機の腰部より低い。 「操縦してみるかい?」 「ええっ、できるの!」  イム・ベーダーが誘う。久麗爺には願ったり叶ったりだ。  太郎が顔を引きつらせ、袖を引っぱる。その手を振りほどき、久麗爺は席に着いた。  肘掛けの先に大きな2本のレバー、その頭部には大小のボタンが並んでいる。左右対称ではないので、それぞれで役割が違うのだろう。 「左のレバーで速度を指示し、右のレバーで方向を指示する」 「なるほど」  イム・ベーダーの助言に従い、久麗爺は左右のレバーを少し押した。微速で前進するはずだ。  ぐらり、部屋が揺れた。23号機が動いたのだ。
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