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「1歩あたり10秒、歩幅は1歩あたり4キロ」
「了解」
イム・ベーダーが23号機の動きを解説した。10秒で4キロ進むなら、1秒では400メートル、マッハ1.2ほどの速度。が、身長30キロのロボットからすれば、やはり微速前進である。
宇宙人は侵略にあたり、地球の文化を徹底的に調べ上げている。秒やキロなどの単位まで知っていて使う。
ディスプレイに足元の風景が映し出されていた。半歩づつ足が進む様子がわかる。
「おっと、いかん」
久麗爺は右のレバーを左へ倒した。23号機は左へ旋回を始めた。
ディスプレイに映る前方は海、黄海だった。23号機は西を向いていた。海岸線の直前で左へ回頭し、南東方向に向けて直進とした。これで朝鮮半島の南端まで地上を歩けるはず。
「けっこう揺れるな。歩いているんだから、当然か」
「重力制御で、機内での揺れは80パーセントほどキャンセルされている。100パーセントキャンセルは特別な部署だけだ」
「なる、あえて残してあるのね」
揺れる事で、歩いている感覚が体に伝わる。テレビゲームには無い感覚だ。
ふう、息をついて、久麗爺はレバーから手を離した。歩いた時間は5分ほどで、23号機は足を止めた。まだ、38度線の北側である。
南朝鮮こと大韓民国の首都、ソウルでも身長30キロの巨大ロボットは見えていた。なにせ、南北国境から40キロほどの都市である。
山越しに見るロボットは、やや青くかすんでいた。ひざ、腰あたりに何層もの薄雲をまとう姿は、原爆のキノコ雲を連想させる。
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