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「すごいぞ! 太郎、おまえも操縦してみんか!」
久麗爺は誘うが、太郎は首を振った。ちっ、爺は孫の態度に舌打ちした。
「男のロマンを理解できんとは、まだまだの年頃だったかのう」
孫を捨て置き、また久麗爺は操縦レバーに手をやった。目を閉じれば、進路クリア、行きまーす、のかけ声が耳に帰ってくる。
「気に入ったようだな」
「無論、もちろん、そーなんだもん!」
子供のようにはしゃぐ久麗爺、七十才である。イム・ベーダーも笑みを絶やさない。
「どうだ、欲しいかね?」
「えっ、くれるの!」
「条件によっては、だ。この23号機と引き替えに、何をくれるのかな?」
「何かと引き替えで・・・」
イム・ベーダーから、まさかの申し出だった。
久麗爺は答えが思い付かない。こんな巨大ロボットと等価交換できる物は持っていない。が、それは地球人的な思い込みかもしれない。何かは分からないが、思いもよらぬ物が宇宙人には貴重かもしれない。
太郎は口を手でおおった。地球をあげます、と祖父が言いそうに感じた。
「引き替えに・・・このロボットと・・・」
うーむ、久麗爺は腕組みで考えた。手持ちのお宝から、『レインボー戦隊』の文庫本とか、『あしたのジョー』初版本セットとか・・・しょーもない物ばかり思い当たる。へたな考え・・・何やらに似たり、だ。
「わしの心臓! では、だめかな」
「心臓?」
「代わりの人工心臓も付けてもらわにゃならんが」
「23号機と心臓を・・・交換?」
イム・ベーダーの唇が震えた。ほおの肉も震えていた。
太郎は口に当てていた手を下ろした。とりあえず、地球の危機は去ったようだ。
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