1日目.禁じられた遊戯

8/9
前へ
/63ページ
次へ
 ううっ・・・う・・・イム・ベーダーは息を止めた。惑星侵略委員会序列2位の威厳を保つため、あまり感情を表にはできない。  ふうう、深呼吸して、息を整える。 「あなたは実におもしろい。せっかく乗ったのだし、もう少し操縦してみたまえ」 「あ、そう」  イム・ベーダーに勧められ、また久麗爺はレバーに手をやった。さっきより、もう少し力を込めた。  ずずっ、ずずっ、操縦室が揺れる。あえて残している揺れが、体を刺激した。アドレナリンが体に満ちてくる。 「1歩あたり8秒、歩幅は1歩約7キロ」  イム・ベーダーが23号機の動きを言った。8秒で7キロなら、秒速800メートル以上、マッハ2プラスの速度だ。 「我が歩みを阻む者無し!」  久麗爺は笑った。  23号機は38度線を越えた。国境線の鉄条網など、身長30キロのロボットには無意味な壁だ。  ついに、南朝鮮こと大韓民国の領土に入った。すぐ、首都ソウルに達した。  地上ではマッハ2を越える衝撃波が暴風となって吹き荒れていた。窓ガラスが割れ、屋根が吹っ飛び、自動車が宙を舞う。  900万トンの地震動が8秒間隔で来れば、23号機の足から10キロ以内では震度5級の揺れ。手抜きのピロティ建築なビルは、たちまち積み上げたパンケーキのように潰れた。  韓国には建築の耐震基準が無い。地震対策の無い建築はウエハースの建物のように崩れていった。  朝鮮半島の南端まで来た。釜山市のタワービルをつま先で蹴飛ばし、23号機は足を止めた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加