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ううっ・・・う・・・イム・ベーダーは息を止めた。惑星侵略委員会序列2位の威厳を保つため、あまり感情を表にはできない。
ふうう、深呼吸して、息を整える。
「あなたは実におもしろい。せっかく乗ったのだし、もう少し操縦してみたまえ」
「あ、そう」
イム・ベーダーに勧められ、また久麗爺はレバーに手をやった。さっきより、もう少し力を込めた。
ずずっ、ずずっ、操縦室が揺れる。あえて残している揺れが、体を刺激した。アドレナリンが体に満ちてくる。
「1歩あたり8秒、歩幅は1歩約7キロ」
イム・ベーダーが23号機の動きを言った。8秒で7キロなら、秒速800メートル以上、マッハ2プラスの速度だ。
「我が歩みを阻む者無し!」
久麗爺は笑った。
23号機は38度線を越えた。国境線の鉄条網など、身長30キロのロボットには無意味な壁だ。
ついに、南朝鮮こと大韓民国の領土に入った。すぐ、首都ソウルに達した。
地上ではマッハ2を越える衝撃波が暴風となって吹き荒れていた。窓ガラスが割れ、屋根が吹っ飛び、自動車が宙を舞う。
900万トンの地震動が8秒間隔で来れば、23号機の足から10キロ以内では震度5級の揺れ。手抜きのピロティ建築なビルは、たちまち積み上げたパンケーキのように潰れた。
韓国には建築の耐震基準が無い。地震対策の無い建築はウエハースの建物のように崩れていった。
朝鮮半島の南端まで来た。釜山市のタワービルをつま先で蹴飛ばし、23号機は足を止めた。
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