1日目・見上げてごらん夜の星を

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1日目・見上げてごらん夜の星を

「父さん!」  息子の久麗念努が帰って来た。まだ西の空に明るさが残る時刻。 「なんだ、今日は早いな」 「テレビに父さんが出て、それで店を早仕舞いにした。後片付けやってたら、こんな時間になったけど」  息を切らす息子に、久麗爺は労いをいれる。小さな家具工場の代表を譲って、すでに10年近い年月が経っていた。作った家具のショールームを街中のビルのテナントに設けたのは昨年、週の半分は街勤めの息子だ。 「片付けくらいに、そんなに時間が要ったのか」 「いや、家の周りを警察の検問がね、それを抜けるのに時間がかかった」 「検問!」  念努が言ったので、久麗爺は窓から外を見た。しかし、警察の姿は無い。  検問は事実だった。ただ、警察は慎重に事を進めた。久麗家から見えない遠くに検問を張った。宇宙人を刺激しないように配慮していた。  ピンポーン、玄関のチャイムが鳴った。嫁の美智が対応に出る。 「お、お爺ちゃん!」  嫁が呼ぶので、久麗爺は玄関へ行った。二人、何やら屈強そうな男たちが来ていた。 「旭川署の広川です。今日の出来事について伺いたいので、ご同行願えますか」 「ああ、その事か」  広川と名乗るのは、警察手帳を示した。おそらく刑事であろう。任意同行と任意聴取と言うやつか。ベテランらしい凄味をきかせた声で、ノーと言わせない雰囲気を漂わせている。 「おーい、太郎、おまえも来い」 「ぼくも行くの?」 「一緒に宇宙船へ乗ったろう。面白くないかもしれないが、これも市民の勤め、けじめだ」  広川は笑みで頷いた。未成年の方は予定していなかったが、事情聴取は人数が多いほど調書の正確度が高まる。  ぴぴっ、となりにいた若手の刑事が通信機に対応した。 「来ちゃった」 「誰が?」  広川は眉も動かさない。上司としての威厳を保つ。
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